レスポンス ¶
アプリケーションは リクエスト の処理を完了すると、レスポンス・オブジェクトを生成して、エンド・ユーザに送信します。 レスポンス・オブジェクトは、HTTP ステータス・コード、HTTP ヘッダ、HTTP ボディなどの情報を含みます。 ウェブ・アプリケーション開発の最終的な目的は、本質的には、さまざまなリクエストに対してそのようなレスポンス・オブジェクトを作成することにあります。
ほとんどの場合は、主として、デフォルトでは yii\web\Response のインスタンスである response
アプリケーション・コンポーネント を使用すべきです。
しかしながら、Yii は、以下で説明するように、あなた自身のレスポンス・オブジェクトを作成してエンド・ユーザに送信することも許容しています。
このセクションでは、レスポンスを構成してエンド・ユーザに送信する方法を説明します。
ステータス・コード ¶
レスポンスを作成するときに最初にすることの一つは、リクエストが成功裡に処理されたかどうかを記述することです。 そのためには、yii\web\Response::statusCode プロパティに有効な HTTP ステータス・コード の一つを設定します。 例えば、下記のように、リクエストの処理が成功したことを示すために、ステータス・コードを 200 に設定します。
Yii::$app->response->statusCode = 200;
ただし、たいていの場合、ステータス・コードを明示的に設定する必要はありません。 これは、yii\web\Response::statusCode のデフォルト値が 200 であるからです。 そして、リクエストが失敗したことを示したいときは、下記のように、適切な HTTP 例外を投げることが出来ます。
throw new \yii\web\NotFoundHttpException;
エラー・ハンドラ は、例外をキャッチすると、例外からステータス・コードを抽出してレスポンスに割り当てます。 上記の yii\web\NotFoundHttpException の場合は、HTTP ステータス 404 と関連付けられています。 次の HTTP 例外が Yii によって事前定義されています。
- yii\web\BadRequestHttpException: ステータス・コード 400
- yii\web\ConflictHttpException: ステータス・コード 409
- yii\web\ForbiddenHttpException: ステータス・コード 403
- yii\web\GoneHttpException: ステータス・コード 410
- yii\web\MethodNotAllowedHttpException: ステータス・コード 405
- yii\web\NotAcceptableHttpException: ステータス・コード 406
- yii\web\NotFoundHttpException: ステータス・コード 404
- yii\web\ServerErrorHttpException: ステータス・コード 500
- yii\web\TooManyRequestsHttpException: ステータス・コード 429
- yii\web\UnauthorizedHttpException: ステータス・コード 401
- yii\web\UnsupportedMediaTypeHttpException: ステータス・コード 415
投げたい例外が上記のリストに無い場合は、yii\web\HttpException から拡張したものを作成することが出来ます。 あるいは、ステータス・コードを指定して yii\web\HttpException を直接に投げることも出来ます。例えば、
throw new \yii\web\HttpException(402);
HTTP ヘッダ ¶
response
コンポーネントの yii\web\Response::headers を操作することによって、HTTP ヘッダを送信することが出来ます。
例えば、
$headers = Yii::$app->response->headers;
// Pragma ヘッダを追加する。既存の Pragma ヘッダは上書きされない。
$headers->add('Pragma', 'no-cache');
// Pragma ヘッダを設定する。既存の Pragma ヘッダは全て破棄される。
$headers->set('Pragma', 'no-cache');
// Pragma ヘッダを削除して、削除された Pragma ヘッダの値を配列に返す。
$values = $headers->remove('Pragma');
Info: ヘッダ名は大文字小文字を区別しません。 そして、新しく登録されたヘッダは、yii\web\Response::send() メソッドが呼ばれるまで送信されません。
レスポンス・ボディ ¶
ほとんどのレスポンスは、エンド・ユーザに対して表示したい内容を示すボディを持っていなければなりません。
既にフォーマットされたボディの文字列を持っている場合は、それをレスポンスの yii\web\Response::$content プロパティに割り付けることが出来ます。 例えば、
Yii::$app->response->content = 'hello world!';
データをエンド・ユーザに送信する前にフォーマットする必要がある場合は、format と data の両方のプロパティをセットしなければなりません。 format プロパティは data がどの形式でフォーマットされるべきかを指定するものです。 例えば、
$response = Yii::$app->response;
$response->format = \yii\web\Response::FORMAT_JSON;
$response->data = ['message' => 'hello world'];
Yii は下記の形式を初めからサポートしています。それぞれ、フォーマッタ クラスとして実装されています。 yii\web\Response::$formatters プロパティを構成することで、これらのフォーマッタをカスタマイズしたり、新しいフォーマッタを追加したりすることが出来ます。
- HTML: yii\web\HtmlResponseFormatter によって実装
- XML: yii\web\XmlResponseFormatter によって実装
- JSON: yii\web\JsonResponseFormatter によって実装
- JSONP: yii\web\JsonResponseFormatter によって実装
レスポンス・ボディは、上記のように、明示的に設定することも出来ますが、たいていの場合は、アクション メソッドの返り値によって暗黙のうちに設定することが出来ます。 よくあるユースケースは下記のようなものになります。
public function actionIndex()
{
return $this->render('index');
}
上記の index
アクションは、index
ビューのレンダリング結果を返しています。
返された値は response
コンポーネントによって受け取られ、フォーマットされてエンド・ユーザに送信されます。
デフォルトのレスポンス形式が HTML であるため、アクション・メソッドの中では文字列を返すだけにすべきです。 別のレスポンス形式を使いたい場合は、データを返す前にレスポンス形式を設定しなければなりません。 例えば、
public function actionInfo()
{
\Yii::$app->response->format = \yii\web\Response::FORMAT_JSON;
return [
'message' => 'hello world',
'code' => 100,
];
}
既に述べたように、デフォルトの response
アプリケーション・コンポーネントを使う代りに、自分自身のレスポンス・オブジェクトを作成してエンド・ユーザに送信することも出来ます。
そうするためには、次のように、アクション・メソッドの中でそのようなオブジェクトを返します。
public function actionInfo()
{
return \Yii::createObject([
'class' => 'yii\web\Response',
'format' => \yii\web\Response::FORMAT_JSON,
'data' => [
'message' => 'hello world',
'code' => 100,
],
]);
}
Note: 自分自身のレスポンス・オブジェクトを作成しようとする場合は、アプリケーションの構成情報で
response
コンポーネントのために設定した構成情報を利用することは出来ません。 しかし、 依存の注入 を使えば、 共通の構成情報をあなたの新しいレスポンス・オブジェクトに適用することが出来ます。
ブラウザのリダイレクト ¶
ブラウザのリダイレクトは Location
HTTP ヘッダの送信に依存しています。
この機能は通常よく使われるものであるため、Yii はこれについて特別のサポートを提供しています。
yii\web\Response::redirect() メソッドを呼ぶことによって、ユーザのブラウザをある URL にリダイレクトすることが出来ます。
このメソッドは与えられた URL を持つ適切な Location
ヘッダを設定して、レスポンス・オブジェクトそのものを返します。
アクション・メソッドの中では、そのショートカット版である yii\web\Controller::redirect() を呼ぶことが出来ます。例えば、
public function actionOld()
{
return $this->redirect('http://example.com/new', 301);
}
上記のコードでは、アクション・メソッドが redirect()
メソッドの結果を返しています。
前に説明したように、アクション・メソッドによって返されるレスポンス・オブジェクトが、エンド・ユーザに送信されるレスポンスとして使用されることになります。
アクション・メソッド以外の場所では、yii\web\Response::redirect() を直接に呼び出し、 メソッド・チェーンで yii\web\Response::send() メソッドを呼んで、レスポンスに余計なコンテントが追加されないことを保証しなければなりません。
\Yii::$app->response->redirect('http://example.com/new', 301)->send();
Info: デフォルトでは、yii\web\Response::redirect() メソッドはレスポンスのステータス・コードを 302 にセットします。 これはブラウザに対して、リクエストされているリソースが 一時的に 異なる URI に配置されていることを示すものです。 ブラウザに対してリソースが 恒久的に 配置替えされたことを教えるためには、ステータス・コード 301 を渡すことが出来ます。
現在のリクエストが AJAX リクエストである場合は、Location
ヘッダを送っても自動的にブラウザをリダイレクトすることにはなりません。
この問題を解決するために、yii\web\Response::redirect() メソッドは X-Redirect
ヘッダにリダイレクト先 URL を値としてセットします。
そして、クライアント・サイドで、このヘッダの値を読み、
それに応じてブラウザをリダイレクトする JavaScript を書くことが出来ます。
Info: Yii には
yii.js
という JavaScript ファイルが付属しています。 これは、よく使われる一連の JavaScript 機能を提供するもので、その中にはX-Redirect
ヘッダに基づくブラウザのリダイレクトも含まれています。 従って、あなたが (yii\web\YiiAsset アセット・バンドルを登録して) この JavaScript ファイルを使うつもりなら、AJAX のリダイレクトをサポートするためには、何も書く必要がなくなります。yii.js
に関する更なる情報は クライアント・スクリプトのセクション にあります。
ファイルを送信する ¶
ブラウザのリダイレクトと同じように、ファイルの送信という機能も特定の HTTP ヘッダに依存しています。 Yii はさまざまなファイル送信の必要をサポートするための一連のメソッドを提供しています。それらはすべて、HTTP range ヘッダに対するサポートを内蔵しています。
これらのメソッドは同じメソッド・シグニチャを持ち、返り値としてレスポンス・オブジェクトを返します。 送信しようとしているファイルが非常に大きなものである場合は、メモリ効率の良い yii\web\Response::sendStreamAsFile() の使用を検討すべきです。 次の例は、コントローラ・アクションでファイルを送信する方法を示すものです。
public function actionDownload()
{
return \Yii::$app->response->sendFile('path/to/file.txt');
}
ファイル送信メソッドをアクション・メソッド以外の場所で呼ぶ場合は、その後で yii\web\Response::send() メソッドも呼んで、 レスポンスに余計なコンテントが追加されないことを保証しなければなりません。
\Yii::$app->response->sendFile('path/to/file.txt')->send();
ウェブ・サーバには、X-Sendfile と呼ばれる特別なファイル送信をサポートするものがあります。
アイデアとしては、ファイルに対するリクエストをウェブ・サーバにリダイレクトして、ウェブ・サーバに直接にファイルを送信させる、というものです。
その結果として、ウェブ・サーバがファイルを送信している間でも、ウェブ・アプリケーションは早期に終了することが出来るようになります。
この機能を使うために、yii\web\Response::xSendFile() を呼ぶことが出来ます。
次のリストは、よく使われるいくつかのウェブ・サーバにおいて X-Sendfile
機能を有効にする方法を要約するものです。
- Apache: X-Sendfile
- Lighttpd v1.4: X-LIGHTTPD-send-file
- Lighttpd v1.5: X-Sendfile
- Nginx: X-Accel-Redirect
- Cherokee: X-Sendfile and X-Accel-Redirect
レスポンスを送信する ¶
レスポンスの中のコンテントは、yii\web\Response::send() メソッドが呼ばれるまでは、エンド・ユーザに向けて送信されません。 デフォルトでは、このメソッドは yii\base\Application::run() の最後で自動的に呼ばれます。 しかし、このメソッドを明示的に呼んで、強制的にレスポンスを即座に送信することも可能です。
yii\web\Response::send() メソッドは次のステップを踏んでレスポンスを送出します。
- yii\web\Response::EVENT_BEFORE_SEND イベントをトリガする。
- yii\web\Response::prepare() を呼んで レスポンス・データ を レスポンス・コンテント としてフォーマットする。
- yii\web\Response::EVENT_AFTER_PREPARE イベントをトリガする。
- yii\web\Response::sendHeaders() を呼んで、登録された HTTP ヘッダを送出する。
- yii\web\Response::sendContent() を呼んで、レスポンスのボディ・コンテントを送出する。
- yii\web\Response::EVENT_AFTER_SEND イベントをトリガする。
yii\web\Response::send() メソッドが一度呼び出された後では、このメソッドに対する更なる呼び出しは無視されます。 このことは、いったんレスポンスが送出された後では、それにコンテントを追加することは出来なくなる、ということを意味します。
ごらんのように、yii\web\Response::send() メソッドはいくつかの有用なイベントをトリガします。 これらのイベントに反応することによって、レスポンスを調整したり修飾したりすることが出来ます。